【不思議な話】『000-0000-0000』からの電話【怖い話・中編】

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【不思議な話・中編】
【怖さレベル】7.0

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『000-0000-0000』の着信履歴

今みたいにオレオレが一般化するよりもずっと前の頃のことだから、未だにあれが何だったのかよく分からない話なんだけど。

ある金曜日、仕事終わり前に親父から電話がかかってきた。

丁度打ち合わせ中だったので、一旦拒否って打ち合わせ後コールバックした。けど出ない。

仕事終わって9時ころ、コンビニで食うもん買おうとしてたらまた電話が鳴った。

画面を見ると親父の表示。

はいと取ると「おう、俺だけど」と親父の声。

どうしたの?と聞くと低くくぐもった声で、「ちょっと具合悪くして検査来たら入院することになってな、家族の人は居ませんか?って言うから電話したんだ。出来ればでいいんだが来れないか?」と言ってきた。

どこだ?と聞くと地元の市民病院だという。

うちは母ちゃんが俺が中学生の頃に亡くなり、親父が一人で俺を育ててくれた。

親父はたった独りの大事な家族だし「勿論行くよ」と言って電話を切った。

どうせ明日は土曜だし今日は実家に泊まればいい、多少遅くなっても構わない。

レンタカー借りて二県隣の地元まで急いで2時間程度だろうか。
兎に角行こうとレンタカー屋へ向かった。

車を走らせながら考えた。

こんな呼び出しは初めてだ。地元の水道局で働く親父は地元を殆ど出ない地元で完結してる人だ。

滅多なことでは電話をしてこないし、ましてや俺に帰ってこいなんて言ったことは今まで一度もない。

高速に乗ると思ったよりも空いている。
急ごうとはやる気持ちに任せてアクセルを踏んだ。

暫くすると途中心配のせいか吐き気がしてきた。

耳鳴りも酷い。

軽く朦朧としながらも親父が心配で意識をしっかり持とうとしてハンドルを握りしめた。

2時間少々かけてやっと地元に到着。

高速を降りて市民病院へ向かう。

人口数千の小さな田舎町だから高速を降りた道は暗い。

時計を見ると11時半を少し回ったところだった。

こんな時間に市民病院って開いてるものだろうか、当直医がいるのか?等と不思議に思いながらもただ親父の身が心配で急いだ。

癌だったらどうしよう、まだろくに恩返しもしてないのにと思うと涙があふれそうになった。

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人気のない市街に入ると、遠くにぼんやりと見覚えのあるコンビニを見つけた。

直ぐにも市民病院へ向かいたかったけど、喉もからからに乾いていたし気分もすぐれなかったので冷たいものでも飲もうと寄ることにした。

がらんとした店内でアイスコーヒーを取ってレジへ向かうと、「山田!」と俺を呼ぶ声がする。

レジに立ってたのは中学高校の同級生の川田だった。

そうだ、ここってこいつんちが経営してるコンビニだったっけ。

川田が懐かしそう語りかけてきた。

「5年ぶりくらいか。帰ってきたのか?」と言うので親父が市民病院にいるらしくて会いに行くんだ、と言った。

「市民病院?あの大池の脇の?」と言うのでそうだというと首をひねる。

「ちょっといいか?」とレジから出てきて飲食スペースの方へ俺を引っ張った。

幸いにも時間のせいか俺意外には客は居ない。

川田が続ける「市民病院だけど、あそここの前の市合併で潰れたよ。隣のF市の病院に統合されて今廃墟になってる。今の時間行っても誰もいないぞ。ブロックされて入れないようになってるし。」

え?どういう事?と言うと親父さんの電話番号教えてと言う。

俺の携帯を見せると自分の携帯で親父の番号へかけだした。

病院いるから出ないよと言う俺を左手で制するとあ、「こんばんはー山田君の同級生です。今隣にいるんで変わりますね」と言って俺にほれっと電話を差し出した。

「もしもし?」と出ると親父の声でああどうした?と聞いてくる。

どうしたも何もあんたが病院居るから来てくれって言ったんじゃんという言葉をぐっと飲みこんで「いや、別に。親父、体は大丈夫?」と聞く。

「ああ、頭と懐具合は悪いけどそれ以外は問題ないぞ!」と言って快活に笑った。

背後にカラオケが流れてる。

12時近いのに元気だな、なるほど確かに病院にはいないし少なくとも真夜中にカラオケを歌う程度には元気らしい。

「ああ、何でもないよ、仕事で近くまで寄ったんだけどもう帰るからまた電話するから」と言って電話を切った。

電話を切って川田に返す。何なんだ…?と訝っていると「まあいいからアイスコーヒー飲めよ、今市民病院行く用事ないなら今日は帰った方がいいぞ。あんなとこ行くとヤンキーに襲われて大池に沈められるぞ!顔見れて良かったよ」と言ってニコっと笑った。

事情を上手く飲み込めずにいたが、取り合えず親父の無事が確認出来たこと、そして謎の電話を真に受けて夜中の12時に廃病院へ一人ぼっちで行く気にはなれず、腑に落ちないままも自分のアパートに帰る事にした。

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川田のコンビニを出て、車を返却し自宅に着いたのは夜中3時手前だった。

自宅のドアを開けると仕事の後に4時間もの運転をしたことで泥のように疲れ、風呂にも入らずベッドに倒れ込んだ。

翌朝、昼前に電話で起こされた。見ると親父の表示。はい…と出ると「おう、元気か?昨日は家に居なくてすまんな。何かあったか?」と聞いてくる。

変な話を告白するようで気が引けたが、親父の携帯から電話があったこと、親父に病院へ呼び出されたこと、川田の家のコンビニで真相を知り引き返した事を正直に話した。

親父はその場で自分の携帯を確認して、その時間に俺へ発信はないと言う。

そして暫く黙り込む親父。

「…市民病院は確かにもうやってない。あの時間に行っても、いや昼間に行っても誰もいないよ。…それよりも川田さんちのコンビニに行ったんだな?川田君もいたのか?」

と聞くので、話した内容や川田の携帯で電話をしたことを告げた。

すると親父はうーん、と言い辛そうに、
「川田さんところのコンビニは半年前に閉店したぞ。ご一家も居なくなっている…。お婆ちゃんから捜索願が出ているはずだ」と。

「昨夜俺にかかってきた番号は、000-0000-0000だった。俺は携帯が壊れたかと思ったが、出てみたら若い男が出てお前に代わったんだ」と言った。

2人とも暫く無言になったが、親父は気を取り直したようで、「取り合えず事情は分かった。お前疲れてないか?仕事は大丈夫か?交通事故とかには気を付けるようにしろよ、また連絡するから」と言うと電話を切った。

当時は携帯のなりすましやSIMコピーとかあるような時代じゃなくて今だったら出来るのかもしれない裏技も無かったように思う。

それに全部が0の発信や通知って出来ることなんだろうか。

川田の一家は数年経った今でも行方不明でいる。

〈了〉

引用元:不可解な体験、謎な話~enigma~ Part108

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