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名もない低い山
うちの実家のほうにあった、名もない低い山の話。
幼稚園、小学校の裏手にあるその山は「裏山」って呼ばれていて、山頂に児童公園が作られてた。昼休みなんかに、こぞって小学生が遊びにいくような場所。
でも、この山、山頂に続く道の途中に、戦争の慰霊碑、小学校とちょっと離れたところにお寺、そしてまたちょっと離れたところに神社(しかも時々自殺する方がいる)があるという、ちょっと怖そうな場所。
その山での出来事。
・犬の散歩をするために、夕方(夏の6時ぐらい?)に俺がその山を上っていたら、慰霊碑の近くの斜面(道はなく、人が上れないところ)に、真っ青な炎が見えた。
数秒して消えたけれど、「あ、やべぇ」って思って速攻引き換えした。いつも散歩してると『もっと歩く』って感じで帰るのを拒否する犬も、この時はふもとまっしぐら。
・同じく犬の散歩をするために、おかんと兄貴が山を登っていた(やっぱ6時ぐらい?)。
すると、またその慰霊碑の近くに来た時、突然、自分達の目の前約10Mほど先に、白い人の形をした煙が出現。勿論、焚き火の季節じゃないし、他に人もいない。2人と1匹、やっぱりふもとまっしぐら。
・中学の時、『見ちゃう』友達、『すごく感じる』友達、『けっこう感じる』友達、『雰囲気を感じる』友達、『全然感じない』友達、総勢10人程で肝試しをかねて花火をすることになり、山頂へ。
すると、空気が違うんだ。生暖かい+ねばーーーっとした空気。
んで、山の斜面のほうからはとてつもなく冷たい空気。
とりあえず花火をしよう!と蝋燭やらバケツを準備したものの、花火がつかない。今日の昼に買ってきた花火ゼンブ火がつかない。
そうこうするうちに一番『見ちゃう』友達が、バケツの水をばしゃーーっと零して、広げてた花火をひっつかむと、「走らず、降りるぞ」と一言。
俺自身、見るってことは(上記の青い火以外)ないけど、今まで斜面から感じていた冷たい空気が、山頂全体に満ち満ちてることに気付いて、一瞬で総毛だった。
みんな一目散に山を降り、結局小学校で花火を再開したんだが、今度はばっちり火がつくんだよ。
やっぱり、そういう場所ってのは何かしらあるんだってことを強く認識してからは、遊び半分で(肝試しとか)上るのはやめようって思った。
牛ヶ首
N県S村に、牛ヶ首という場所があります。私の祖母がその近郷出身です。
小学生の頃にその祖母から聞いた、牛ヶ首近辺であった昔々の話です。
祖母の曽祖母の弟にあたる人が、金貸しをやっていました。(江戸時代らしいです)私にとってはご先祖さまなんですが、残念ながら名前はわかりませんので、仮に太郎さんとします。太郎さんは、高利貸しであったらしく、あまり評判は良くなかったようです。
ある夏の日、太郎さんは小僧さん一人をお供につれ、貸した金を取り立てるため、山中の集落に出向きました。
集落の人たちに貸していたお金の取り立てが、どのように行われたかははっきりとは伝わっていません。
ただ、山の集落の人たちは酒席を用意し、かなりお酒を勧めたそうです。
そして太郎さんは酔っ払って、お供の小僧さんと一緒に、夜の山道を帰ったということです。
で結局、太郎さんと小僧さん、二人とも家にもどることはありませんでした。そのまま行方知れずとなりました。
山の集落の人たちに尋ねても、「お金を返し、酒を飲んで別れた後のことはわからない」と、皆が答えたそうです。
残された家族は、山の集落の人たちではなく、ふもとの村人たちにお願いして、山の中を捜してもらいました。
そして、帰り道とは逆方向の崖の下で、太郎さんの遺体をようやく見つけることができたそうです。
遺体はすさまじい形相をしていました。
最終的には、夜の山道で酔っ払って落ちたんだろう、とされましたが、帰るべき家とは逆方向にある崖から落ちたなんて妙な話だと、噂になったそうです。
さらに、取り立てた(山の集落の人々が払ったといってる)お金は、結局どこからもでてきませんでした。
また、お供の小僧さんがずっと見つからないのは、神隠しだとか、主人を殺して金を奪い逐電したんだとか、いろいろと噂になったそうです。
わたしは、この話を初めて聞いた小学生の時から、きっと小僧さんも、×のXXの人たちに殺されたんだと思っています。
山の集落は過疎のため、昭和40年代中ごろに廃村となっています。
山で迷子
子供のころ、家族で山に行ったことがある。
山についたのはまだ朝方で、霧が辺りを覆っていた。僕は親の言い付けを守らず、一人で山中に歩き入り、当然のように迷子になってしまった。
何時間歩き迷っただろうか。太陽はすでに頭の上にあり、お昼を食べ逃した僕は半ベソをかきながら座り込んだ。
ふと気付いたら、泣いている僕の傍らに人が近づいてきた。両親かと期待したのだが、まったくの別人だった。
奇妙な姿をしていた。毛皮らしい服と麦藁で編んだ帽子。そして恐ろしく背が高い。僕の父より頭二つは確実に大きかったと思う。話し掛けてきた。ひどく訛っていてよく分からない。
かろうじて「迷子か?」という語だけ聞き取れた。うなづくと、しばらく迷った後、僕を連れ歩き出した。
なぜかすぐに見覚えのある場所に出た。親の声も聞こえる。いつのまにかまた一人になっていた。親はすぐに僕を見つけてくれた。
なぜかこの体験を、僕は忘れてしまっていた。つい最近久しぶりにこの山へ行き、そこで思い出したのだ。
家に帰って親に尋ねてみた。両親は僕と違って憶えていた。
「いきなり目の前の茂みから、お前が出てきたんだ。『何処行ってた』と聞くと、お前は変なこと言ってたぞ」
親はそこで奇妙な顔になって続けた。
「『背の高い、一つ目のおじちゃんに連れて帰ってもらった』
お前、そう言ってたんだ」
全然憶えていない。僕は自分を助けてくれた人の顔を思い出せないのだ。
本当に一つ目だったのか・・・。
あれから何度かあの山をうろついたが、誰に出会うことも無かった。せめてお礼をと思い、お酒を僕が見つかった場所に置いてきただけだ。
取り留めもないですが、僕の奇妙な経験です。
地蔵山
某県に地蔵山という山があります。山と言っても塚のようなもので、本当に小さいものです。
その山にはいやな伝承がありまして、かつて江戸時代の初期に豪農が、金の力に物言わせて黄金の地蔵をつくり、塚に埋めたという黄金伝説があるのです。
しかし、この地蔵を掘り起こした者には豪農の祟りがあり、ことごとく死んでしまうと言います。
その埋めた場所を暗号で記した古文書がありまして、明治時代に地元の若者5人組が地蔵の発掘に挑んで、3人が発狂、1人が自殺、1人が行方不明なったこともあったそうです。
大正時代にも発掘をした人がいて、この人も原因不明の病気でうなされ、「地蔵がくる。地蔵がくる」とうわごとを言いながら亡くなっていきました。
そして昭和の頃、またまた成金がこの地蔵の発掘に挑みました。今度の成金は強引で、この山ごと崩してしまったのです。しかし、地蔵は出てこなかったのです。
おさまらない成金のおやじは、その土地に大型マンションを建設しはじめました。地元では祟りがあるからやめろという声があったのですが、工事は押し進められました。
しかし悲劇はおこったのです。
現場の視察にきた成金親父は、コンクリートの打設工事を見学していました。しかし、柱のコンクリート打設面をおさえていた型枠がはずれ、成金親父はコンクリートの下敷きになってしまったのです。5分後、救出された親父は既に窒息死していました。
そしてその体はコンクリートが全身につき、まるで『地蔵』のようになっていたそうです。
赤い服の人
ある時、3人で沢登りに行ったが、15メートルほどの滝が、状態が悪くどうにも直登できなかった。
やむを得ず、滝の左側の斜面を大きく回りこみ、滝の頂上に出ようとした時、先頭を行く友人(A)が突然落下した。
滝つぼには岩が突き出ており、Aはその岩に顔面をぶつけたように見えた。苦労してよじ登った斜面を、別の友人Bとふたりで転がるように駆け下りたが、その時、俺の耳に甲高い笑い声が響いた。
そして眼前に、哄笑する男性の顔。その顔に構わず突っ込んだ刹那、足がもつれて俺は転んでしまった。
とにかく、そんな事は気にせず起き上がり、下まで降りると、先に下りたBが、Aを滝つぼから引き摺り揚げている所だった。
Aの顔は腫れ、膨れ、鼻と目から出血していた。鼻といっても、完全に潰れて顔の中に埋まっている。のっぺらぼうというのは、あのような顔の事を言うのかもしれん。
麓のキャンプ場で救急車を呼び、救急隊員が滝に到着し、Aを担架に固定した。
滝までは獣道があるだけなので、救急隊員と俺とBの4人が交替で担架を持ったが、顔面からの出血がひどく、その血が流れてくるので、担架を持つ手が何度も滑り、その都度担架は大きく揺れ、Aは痛みを訴え続けた。
ようやく救急車にAを乗せ、Bは病院まで同行する事になった。俺はもう一度滝まで引き返し、散乱している荷物を回収し、麓まで戻った。
Aの車で出かけた為、仕方なくヒッチハイクしたが、あちこちに血をつけた俺を良く乗せてくれたもんだと、妙な感心をしている。
退院後、Aは「落ちる直前に、滝の上に赤い服を着た釣り人の姿を見た」と言い、
それから後の事は、良く覚えていないらしかった。
病院に担ぎ込まれた直後、「赤い服を着た人が居る」とか、その人を「滝で見た」とか、大騒ぎしたらしいが、それも本人にすればうわごとで、一切覚えていないとの事。
Aはかなりの手術の末に一命を取り止め、結婚し、子供にも恵まれた。そして2年ほど前、仕事中の事故で高所から落下し、死亡した。
全裸隊が見た笑う男は、赤い服を着ていたのか?
見えたのはほとんど肩から上だけで、服装までは良く覚えてないんだが、Aが「赤い服の釣り人・・・」と言い出した時、同じだ、とぎょっとした事は覚えている。
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