【駅の怖い話】『電車に飛び込む瞬間を見てしまった』『電車への飛び込み自殺の後処理にて』【短編・2話まとめ】

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【ヒトコワ・短編】
【怖さレベル】8.0

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電車に飛び込む瞬間を見てしまった…

俺は人身事故で有名な、C線を利用して通勤している。

先週も飛び込み自殺があった。

俺の使っている駅で・・・

今日、いつもよりちょっと早く起きた俺は、ホームに佇んで何気なく、反対側のホームを見ていた。

まだ電車の本数も少なく、向こうは下りホームだけあって人もまばらだった。

「○○線に××方面行きの下り電車が参ります」

電車のアナウンスだ。

ふとホームを見ると、俺の正面に女性が立っている。

26~7歳くらいの、いたって普通の女性だ。

だが、何かが変だ・・・

何だ・・・

女性の顔が恐怖に強張っている。

しかも、下りの電車がホームに入って来るにつれ、

何かに引きずられる様に一歩一歩とホームの端に近づいて行くのだ。

俺は、その光景を間近で目の当たりにし、恐怖のために唇一つ動かす事が出来なかった。

鋭い金属音と悲鳴が響き渡り、電車は止まった。

俺の目の前に、大量の血とピンクの肉片が広く飛び散っていた。

あまりにグロテスクなものを見てしまい、吐き気をもよおしそうになった。

が、そろそろ会社に行かないといけない俺は、急いで振り替えのバスに乗るため、

ホームを立ち去った。

あの違和感は何だったのか、バスの中で考える。

どうしても分からない。

バスは新宿に近づき、高層ビルの間をくぐり始めた。

太陽の光が高層ビルのガラスで乱反射して、とても眩しい。

「眩しいな・・・眩しい・・・そうか!」

俺は遂に合点がいき、大声を出してしまった。

あれは、飛び込み自殺を間近に見たり、恐怖に強張った女性の顔を見たから

違和感があったのではない。

その前から、おかしかったのだ!

「思い出せ・・・」

俺は今朝の光景を脳裏に描き始めた。

俺の利用する駅のホームは、東西に伸びている。

つまり、朝日は上りホームを利用する俺の左手側から

右手側に向かって差し込む。

ホームの屋根を支える柱も、駅の売店も、何もかもが左から右に向かって影を作るはずだ。

しかし、あの女性の場合は違った。

あの女性が形作っていた影は、足元から下、

つまり、こちら側(反対のホーム)に伸びていた。

どう考えても自然ではない。

あの女性は何か得体の知れないものに、引きずり込まれたんじゃないのか?

例えようもない気持ち悪さが、胸から喉へと込み上げてくる。

深夜遅くに家へ帰り、俺はネットで自分を納得させる理由を

探して回った。

そして、遂に見つけた。

数年前、この駅で人身事故が起こった時の

駅ホームの写真だ。

事故の発生時刻は、今朝のものと大体同じだ。

そして、俺はホームを凝視し、恐怖した。

黒い腕の様な影が、線路からホームへと無数に伸び、事故に遭った人の足元に絡み憑いていた・・・

〈了〉

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電車への飛び込み自殺の後処理

これは、鉄道会社に勤務していた知り合いの田中さん(仮名)から聞いた話です。

ある冬の日、田中さんの勤務時間中に『飛び込み自殺』があったそうです。

田中さんは仕事を辞めるまでに計3回の飛び込み自殺の後処理をしたそうですが、こればかりは慣れるものではなかったと言います。

特に、自殺者の遺体を“集める”作業は・・・。

幸いと言うべきか、その日の自殺者の遺体はさほど傷んではおらず、五体は右手が肘から下の部分が欠けていることを除いてほぼ揃っていました。

田中さんはその遺体の状態を見て、ダイヤ(運行時間)の復旧は早そうだな、と思ったそうです。

しかし、唯一欠けている遺体の右腕が一向に見つかりませんでした。

かなり長い時間に渡って探したものの、結局右腕は見つからず・・・。

これ以上は電車の運行を止めておくわけにもいかず、その日は遺体の右腕が見つからないまま電車を動かし始めたそうです。

その後も右腕の探索は続いたのですが、見つかることはなく3週間ほどが経ちました。

そんなある日、田中さんの勤務中に乗客から「コインロッカーから異臭がする」という苦情が寄せられました。

その駅では、忘れられた食品がロッカーの中で腐ってしまったことが何度かあったので、またそういったことだろうと思いながら田中さんは確認しに行きました。

苦情のあったロッカーは駅の外に置いてあるもので、近寄ってみたところ、確かに何かが腐ったような臭いがしていました。

田中さんは合鍵を使って、そのロッカーを開けました。

中には、『衣服が絡み付いた人間の肘から下の部分の右腕』が入っていました。

それを見た瞬間、田中さんは嘔吐してしまったそうです。

田中さんはこう言っていました。

「仕事の上なら見る覚悟もできているので、人の死体を見ることはまだ我慢できた。ただ、全く予想していない状況で人の一部分を見たら、(右腕の)持ち主には申し訳ないが吐いてしまった」

警察が調べた結果、その右腕は3週間ほど前に飛び込み自殺をした人のものだと、後に判明しました。

ですが、田中さんは自分が関わった2つの出来事、”飛び込み自殺の処理”と”ロッカーの中の右腕を発見したこと”が繋がるとは思ってもおらず、右腕を発見した時は、ただ頭が混乱するだけだったと言います。

結局、ロッカーに右腕を入れた人物は見つかりませんでした。

田中さんはこうも言っていました。

「生きている人間が落ちていた人間の右腕をロッカーに入れて放置したと考えるのが普通なんだろうが、それが一番怖い。それに比べたら、自殺者が死後、自分の右腕をロッカーに入れたと考えた方がいい」

その後、田中さんは鉄道会社を退職しました。

この件が駅員生活で最後に処理した飛び込み自殺になったそうです。

田中さんは鉄道会社を退職した理由を、「子供が生まれたので勤務時間が決まっている仕事に就きたかった」と言っていますが、本当のところはわかりません。(駅員は土日出勤もあり、勤務の開始時間も終了時間も不定とのことです)

〈了〉

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