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【山の怖い話・中編】
【怖さレベル】
大学に通っていた俺の友人の彼女の話。
3年前のこと。
彼女(仮にAとします)は夏休みもある日のこと他の大学の友人たちと一緒にキャンプに行くことになった。
メンバーは男5人に女4人の9人。
でいざ車で出発して目的地に着いたのは良いものの夏も終わりだってのに人が結構沢山いたため、そこのリーダーの男が急遽「人多いから別な場所探すか」といったので、またまた場所変更することにした。
車でキャンプ場を離れて山を上がることになった。
そのリーダーの人は、なんでも秘密の場所を知ってるらしくそこはキャンプには絶好の場所らしい。
山を上がって行ってしばらくしたとき国道とは別にギリギリ車一台入れる旧道っぽい道があった。
リーダーの人は「この先にある」といった。
旧道なので仕方ないとは思うがかなり不気味な場所だった。
折れた標識,滅茶苦茶なガードレール,昼間だというのに木が覆い茂っていて暗く本当にこの先にキャンプに最適な場所なんてあるのか?と皆疑問に思った。
旧道に入り5分もかからずリーダーの人は車を止めて、
「ここから先は歩くから」といった。
旧道の横に細い道があった。
獣道ってほどはないけど歩きずらそうな道ではあった。
まあ今日はキャンプで皆汚れてもいいような服で来ていたため誰も躊躇わず道を進んだ。
道を下って3分もかからない内にそこそこ広い河原がみえてきた。
確かにここはキャンプには絶景の場所である。
すると道にそれた場所にボロボロの小屋があった。
リーダーは「ここがトイレ」といった。
何故かはしらないが水道が通っておりちゃんと使えるらしい。
それからちょっとして河原に到着した。
あらためて見ると、川もそれほど急な流れではなく場所もかなり広い。ボロボロだけどトイレもある。
なんでこんないい場所がキャンプ使われてないんだと一人が言った。
確かにAも尿意を催してきたので3人でトイレに行くことにした。
昼間でさえ暗かった道は夜になるとさらに闇に包まれていた。
懐中電灯をつけながら転ばない様に足元に気を付けて、トイレにやってきた。
トイレは男女共用で個室は1つしかなかった。
じゃあAから行くということで個室を開けようとしたが鍵がかかっていた。
もしかして男グループが入ってるのかな?と思ったが、
Bが「そんなはずはない男グループがトイレに入っていく様子はなかった」といった。
まさか自分たち以外にここに来た人がいる?というのも考えにくかった
一気に背筋が凍ってきた。
個室の中にいるのは何者なのか…?
Bが「大丈夫ただ個室のカギが壊れてるだけかも…」と言いかけた時……カラカラとトイレットペーパーを引く音がした。
やっぱり誰かいるのだ。
Aが「もしかして幽霊……じゃないよね……」といったがBが、「そんなはずないでしょ!ここに誰か来ただけでしょ諦めてテントに戻ろう」と言ったので戻ることにした。
腕時計を見ると夜中の1時ごろだったので、まあ我慢はできるかと思い
再び眠りにつくことにした。
しかし1時間後。
どうしても我慢できず寝付けなかった。
BとCも同じように寝付けなかったためもう一度トイレに向かった。
さすがに1時間たったからもう開いてるだろうと思ったがまだ個室は閉まっていた。
3人とも苛立ち早く開いて欲しいと願っていた。
さっきとは違いそれほど恐怖は感じていなかった。
それから30分したが一向に開く気配はなかった。
ノックしたりもしたが返事はなかった。
3人ともしゃがんだりもじもじしながら早く出てくださいと何度も言ったが、それでも何も応答はなかった。
その内とんでもないことが起こった。
Cが突然「あ……あ……駄目…」と声を漏らした。
暗かったがCのズボンがどんどん濡れだし、Cのしゃがんだ下に水たまりができているのが分かった。
AとBもあえて口に出さずにどんまいと呟いた。
Cは少し半べそになりながら「着替えてくる」と呟いてテントに戻った。
AもBも腹が立ってきた。
誰が入ってるのか分からないけど、個室にいつまでいる気なのだろうかと。
Bが「もう私たちもその辺でしちゃおう」といったのでAもBもトイレを後にしたときだった。
ブロロロ…と旧道のほうで車の音がした。
やっぱり私たち以外にも来てる人がいるのだろうか?と思い、ちょっとどういう人が来てるのか様子をみようよとBが言ったので、Aも渋々ながら同意し、旧道のほうへと向かった。
が、旧道へ着いたものの車はなかった。
あることはあるがこれはAたちが乗ってきた車である。
これには2人ともおかしいな思った。
確かにさっき車が走る音が聞こえた。
国道の車の音がここまで聞こえてくることはないので、どう考えても旧道に車が来たのである。
Bが「もう気味悪いからここでおしっこ済ましちゃおう」
といったのでここで用を足すことにした。
用を足しているとまた、ブロロロ…と車の音がした。
そして、今度はちゃんと姿形を現して。
その車は暗くてよくはみえなかったが、四輪駆動の自動車だということは分かった。
車はAとBの10m手前で止まり、中から一人でてきた。
暗くて男か女かも分からなかったが何か棒のようなものを持っている。
この何者かはAとBに気付いていないらしく、その辺をうろうろしていた。
AもBも震えてしょうがなかった。
もしかして立ち入り禁止の場所に勝手に入って行ってしまったので注意しに来たのだろうか?
でも、それならまだいい。
車から出てきた何者かは、何故かは知らないけど得体のしれないものと感じたからである。
早くおしっこ終わって欲しいよと願いながらどうか気づきませんようにとAは思った。
すると突然その何者かはこちらのほうへと向かい始めたのである。
それがこちらの事に気付いているのか分からないが、AもBも我慢の限界でダッシュでテントへ戻った。
2人ともしばらく震えていたが、気が付くと眠ってしまったようである。
それから夜が明け2人は他の人たちに昨日の出来事を話した。
ここは得体のしれない何かがいる早いところ出たほうがいいと。
しかし他の人たちがからはどうもイマイチ信用できずリーダーがじゃあトイレから調べてみようということで、全員でトイレに向かった。
トイレの個室は普通に開いていた。
やはり昨日は誰かがいたのである。
ふと一人が「うわっやべえよ……これ……」といいだした。
みると全員が息をのんだ。
個室は血の跡のようなものがあちらこちらにあり、あきらかに首吊り用のロープがぶら下がっていたからである。
一人の女子が「なんか気持ち悪いからもう出ようよ……というので皆で帰り支度を始めることにした。
車に戻ろうと旧道に出た時AとBはあれ?と思った。
昨日車が来てたはずなのに車輪の跡がないのである。
やっぱりあれは幽霊だったのだろうか?そう思い車は発進した。
しばらく旧道を進んでいると後ろにいた人が「なんだあれ!!」といった。
それは満面の笑みで右手で斧を振り回しながら左手で手を振りながら、こちらへ走ってくる中年っぽい男だった。
なぜかは知らないが明らかに車と同じ速度である。
一人が「もっとスピードを出せ!!」というのでリーダーも焦りスピードを速めた。
その斧男は旧道を出た瞬間フッと消えたそうだ。
やがて山も下りたころリーダーが呟いた。
「あのさ実は皆に黙っていたことがあるんだけどさ…。俺去年あそこ言った時立ち入り禁止の看板壊しちゃったんだよね…。その時看板の中に御札みたいなのが挟まってたんだよね…。でさ…その看板そこに放置してたんだけど、今回きたとき見当たらなかったじゃん?だからさ、誰かがあそこに住んでるんじゃないかなって思うんだよ……」
〈了〉
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